多くの住宅関連企業(工務店)で、営業時に自社の優位性をお話ししていると思います。一方で、なかなか自社の強みが伝わらない、差別化ができないといったお悩みも多く伺います。

 

こちらは、ある経営者のお悩みです。

 

うちは高気密・高断熱が強み。

断熱ではどこにも負けないよ。

中でもÇ値が最高値でそこがウリだよね。

あとはベタ基礎で躯体内換気システムも完備しているからどこの住宅よりいいんだよな。

営業にもしっかりそのへん説明しろって言ってんだけどどうも説明出来てないんじゃないかな。

しっかり説明したら絶対勝てる強みなんだけど言ってもなかなかやってくれないんだよな・・・。

 

このように、自社の強みが刺さらないといった点についてどのような施策を行うべきかを今回はお伝えします。

 

では本日の目次をお示しいたします。

 

 

課題解決営業に必要な「差別化」

 

まず、住宅営業においては、次の図にあるように、顧客の課題解決を行う営業が主流となっています。単に商品の説明をするだけではなく、顧客の課題を解決しながら営業ステップを進めることが重要です。

 

 

課題解決営業が求められる背景については下記に詳しく記していますので併せてご覧ください。

 

 

また、課題解決営業は「信用獲得」「課題解決」「差別化」の流れで進めることが良いとされています。課題解決を行うにしても人としての信用力が必要ですし、ただ単に解決するだけではなく自社の差別化を行う必要がある、という考え方ですね。ここでは差別化について深掘りしていきますので、信用獲得と課題解決の考え方について先に簡単にご紹介します。

 

 

一つ目の信用獲得については、営業マン、もっと言えば一人の人間としていかに信用を獲得するか、という考え方になります。信用がなければ課題解決を行うことは困難ですので、最初のタイミングで信用を獲得することが重要です。

 

 

二つ目の課題解決については、見込み客に対してどのように課題解決を進めるかを押さえることが重要です。

 

 

なぜ自社の提案は刺さらないのか?

 

内容に入る前にまず考えていただきたいのですが、営業時に自社の差別化要素は見込み客に伝わっていますでしょうか。

 

多くの住宅営業では、下の図のような営業トークをしてしまっているのではないでしょうか。このような特徴の話ばかりをしても、顧客に魅力は伝わりません。

 

 

こちらは、マーケティングの権威であるセオドア・レビットの格言です。「人々は4分の1インチのドリルを欲しいのではない。人々が欲しいのは4分の1インチの穴である」という言葉ですが、どういうことでしょうか。

 

 

その真意は、ドリルを買いたい人はドリルを買うことが目的ではなく、穴を開けることが目的だということです。ですから、ドリルの説明ばかりしても見込み客に刺さらないという結果になるのです。

 

 

住宅業界で言えば、顧客が買いたいものは家ではなく暮らしです。UA値や工法などの話ではなく、その先にある豊かな生活を求めています。ですから、UA値や工法の話ばかりをしても見込み客には全く刺さらないのです。

 

 

顧客に響かせる商品説明「FABE」とは?

 

このようなことを防ぐためにどうすればよいでしょうか。結論から言えば、下の図のような四つの要素に沿って説明するのがよいとされています。それぞれの頭文字を取ってFABE(フェイブ)と呼ばれています。

 

 

まず一つ目が特徴です。特徴は商品そのものの説明を指します。食洗機で言えば、「スピーディーでコンパクト」が特徴になります。二つ目が利点です。利点は商品がもたらす効果を指します。食洗機で言えば、「従来の2倍のスピードで食洗が可能であること」が利点です。三つ目が利益です。利益は商品がもたらす付加価値を指します。食洗機で言えば、「空いた時間で料理ができること」が利益になります。そして、四つ目が証拠です。それらを証明する事例やデータを指します。食洗機で言えば、特徴や利点を証明する「調査機関データ」が証拠になります。

 

なお、先ほどお伝えした営業マンの事例は、まさに「特徴」のみを話しているために顧客に響かないケースです。

 

下の図は「防水テレビ」についての売れる営業と売れない営業のトーをク比較したものです。売れない営業は前述した「特徴」のみを話している一方で、売れる営業は特徴だけでなく利点や利益、証拠まで丁寧に説明しています。このように、FABEによっていかに商品の魅力を最大化するか、が重要なのです。

 

 

 

では、今回のテーマである住宅の性能の観点で、このFABEの考え方を深掘りしていきます。

 

FABEを徹底理解①〜特徴〜

 

まず特徴については、次の二つのポイントを押さえることが重要です。

 

オンリーワン、あるいはナンバーワンを明確にする

単に特徴を説明するだけでは、顧客にインパクトを与えることは困難です。その人にとってのオンリーワン、あるいはナンバーワンを明確にして説明することが重要です。

 

分かりやすく伝える

住宅業界で使われる用語は、顧客にとって馴染みのないケースが多いです。意味合いを例えなどで言い換え、分かりやすく伝えることが重要です。

 

 

FABEを徹底理解②〜利点〜

 

利点については、次の二つのポイントを押さえることが重要です。

 

顧客が出来るるようになること、しやすくなることを伝える

利点の考え方としては「それによって顧客ができるようになること、しやすくなること」です。商品の特徴を踏まえて、顧客ができるようになること、しやすくなることは何かを考えることが重要です。

 

商品を主語に置かない

利点を説明する際に、商品を主語に置くケースが多く見られますが、あくまで顧客主体で説明することがポイントです。顧客を主語に置いて、どのような利点があるのかを整理することが重要です。

 

 

FABEを徹底理解③〜利益〜

 

利益については、次の二つのポイントを押さえることが重要です。

 

ニーズ(あれば良い)からウォンツ(絶対欲しい)に引き上げる

利点の説明だけであれば、「あればよい」というニーズで終わってしまいます。そこから「絶対欲しい」(ウォンツ)に引き上げるために、その利点による付加価値をできるだけ伝えることが重要です。

 

利点は「物理的要素」であるが利益は「心理的要素」を入れる

利点と利益の違いが分かりづらいですが、利点は「物理的要素」であるのに対し、利益は「心理的要素」です。物理的な要素を説明した上で心理的な要素を説明する習慣づけが必要です。

 

 

心理的なメリットは、次の図にあるような感情を表現する言葉を多く活用することで、顧客が感じる付加価値を最大限まで引き上げることが重要です。自社の商品を説明する際は、このような表現を多用しながら説明をしましょう。

 

 

FABEを徹底理解④〜証拠〜

 

証拠については、次の二つのポイントを押さえることが重要です。

 

複合的に使う

証拠は複合的に使用することが重要です。体感、カタログ、調査機関データ、その他(専門家の意見、お客様の声、実演、新聞・雑誌など)を活用し、中でも体感は最も説得力がありますので、随所に使うことがポイントです。

 

資料や体感ツールはメーカーを最大限活用する

証拠に活用する資料やツールはメーカーが取り揃えているケースが多く見られます。自社で取り扱っている資材や設備に関するものは全て取り揃えておくことが重要です。

 

 

こちらはある住宅会社の、ポットを活用した気密性の体感事例と塗り絵を活用した漆喰塗料の体感事例です。ポットの事例では、性能が低いポットと性能が高いポットを並べます。性能が高いポットは外側に全く熱気を持たないのですが、性能が低いポットは外側に熱気を持ってしまいます。このような性質の違いを実際に触ってもらうことで体感させる取り組みです。

 

漆喰塗料の事例では、性能の高い塗料と低い塗料を用意します。性能の低い塗料は非常に刺激の強い匂いがしますので実際に体感することで理解をしてもらう取り組みです。

 

 

他にも下の図のように、断熱工法の説明、断熱ガラス性能の説明など、さまざまなケースで応用が可能です。一部の会社では、体感ブースを設けてさまざまな効用を体感してもらう仕掛けを行っています。頭で理解するだけでなく、体で理解することで印象に残りやすくなるということですね。

 

 

最近では耐震を体感する免震体験車が人気ですが、これらはメーカーに依頼すれば準備してくれますので、メーカーのサポートを最大限活かしながら見込み客に体感演出を提供しましょう。

 

なお、下の図は、実際にある住宅関連企業(工務店)で自社の特徴をFABEの観点でまとめる際に使用したツールです。このようなツールを使いながら、自社の特徴を正確にまとめ上げる取り組みを行いましょう。

 

 

こちらのツールは下のリンク先よりダウンロードができますので、必要に応じて活用し、自社のサービスを改めて整理しましょう。

 

 

本日のまとめ

 

改めて、本日のまとめをお示しいたします。

checkbox単に特徴を伝えるだけでは顧客に刺さる提案にならない

checkboxFABEに沿って商品を説明することによってより顧客に刺さりやすい提案に変えることが出来る

checkboxそれぞれのポイントを踏まえて改めて自社のサービスを再整理することが重要である

 

以上、今回は、見込み客に自社の優位性をどのように伝えるかについて考察してきました。このような取り組みは非常に即効性が高いので、早期に対策を行っていきましょう。

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