今回は営業強化における、顕在客対応の考え方について触れていきます。

 

こちらは、ある営業部長の悩みです。

 

最近は今すぐ家づくりをしたい顧客よりまだ先の顧客が増えてきたな。

苦手なんだよな、まだ先客の営業。

最初に名刺交換をしてもムスッとしててさ、妙に警戒してるんだよね。

こっちは早く商品のプレゼンをして契約に繋げたいのに・・・。

え、関係性を構築する?

そんなこと言ったって最近のお客さんは若すぎて距離の掴み方が分からないんだよな。。

 

このように、まだ先客への対応に関して、どのような流れで営業を行えばよいのかが分からないと悩むケースが非常に多いのではないでしょうか。今回は、この顕在客対応と、その中の要素であるグリッピングについて具体的に説明していきます。

 

では本日の目次をお示しいたします。

 

 

顕在客対応について

 

まず、下の図をご覧ください。弊社で独自に調査した、住宅営業トップセールス10人の平均実績と平均KPIを示したものです。

 

 

このトップセールスについては、平均の年間販売棟数が25棟、住宅営業キャリア15年を平均営業指標として、初回接客からの土地契約率が50%、初回接客から初回面談を経た建物契約率が70%のトップセールス10名になります。結論から言えば、下の図にある通り、トップセールスについては「営業ステップ」ではなく「心理ステップ」に沿って営業活動を行っている点が共通していました。

 

 

具体的な営業の流れについて、下の図をご覧ください。

 

 

一般的な営業ステップは、自己紹介・資金計画・プラン提案・土地提案・クロージングというように、営業マン自身の都合によって、ステップが分かれています。しかしながら、顧客の心理としては、最初に会ったタイミングで、「関係性が全くないのに、一方的に話しかけないでほしい」と考えてしまいます。このような中で資金計画などの話を進めても、「信頼関係がないのに年収を教えたくない」といった不信感を持たれてしまいます。

 

その上、一方的なプラン提案をすることで、「家づくりの不安や不満を汲み取ってくれない」との良くない印象を抱かれてしまうことにもなりかねません。また、顧客からすると、土地提案や商品提案などにおいては、「商品の種類ではなく中立的なアドバイスが欲しい」と感じていますし、単に機能の説明をするのではなく、もっとわくわくするような提案が聞きたいと考えています。

 

このような顧客の心理に沿って営業活動を行わなければ、結果的には一方的な営業となり、顧客は自社で契約を決めにくくなってしまいます。そのような中で、有効な心理ステップは、下の図のようになります。

 

 

まずグリッピングの要素から始めるのですが、グリッピングは人として認められることを指します。次に、ポジショニングです。ポジショニングは、住宅営業のプロとして認められることを指します。そして、コーチングで、顧客が求めている豊かな暮らしと現状のギャップを聞き出し、適切にアドバイスを行いましょう。

 

さらに、次のステップであるフレーミングを行います。フレーミングでは、住宅購入の基準を自社の強みに沿って中立的に提示します。そして最後のイメージングは、実際の豊かな暮らしをイメージさせ、顧客をわくわくさせることを指します。これらをまとめると下の図のようになります。

 

 

まずは一般的な営業ステップを進め、その一方で、「関係性が全くないのに、話しかけないでほしい」といったハードルへグリッピングを行います。また、「信頼がないのに年収なんか教えない」といったハードルに対しては、ポジショニングを取って信頼を勝ち取ります。

 

次に、「家づくりの不満」などについてはコーチングでニーズを汲み取り、「商品の押し売りでなく、中立的なアドバイスが欲しい」とのハードルには、中立的なアドバイスにてフレーミングを行います。最後に「単なる機能説明ではなく、もっとわくわくさせてほしい」といったハードルに対して、イメージングを行います。

 

このような心理ステップに沿った営業活動を行うことで、前述した年間販売棟数25棟、契約率が建物契約で70%を超える営業マンになることができるのです。

 

グリッピングとは

 

これらの心理ステップのうち、今回は、営業強化におけるグリッピングについて詳しく解説します。

 

グリップには、本来の意味とビジネスで使われる意味があります。本来はラケットのグリップやバットのグリップなど「握る」意味で使われていますが、ビジネスでは「関係性を構築する」「認識を合わせる」「約束する」などの意味で使われています。これを踏まえた上で、住宅業界の営業について考えてみましょう。

 

 

一般的に、初来場のお客様は、営業マンに対して警戒心を持った状態で物件に来場します。この段階では、営業マンとの会話も口数が少なかったり、営業マンの質問に対しても当たり障りのない範囲で返答するにとどまり、十分なコミュニケーションが成立しません。したがって、まずはお客様の警戒心を解きほぐし、普通に会話ができるだけの関係を構築することが大切です。

 

言い換えれば、普通に話を聞いていただける関係性をつくることが、あらゆる商談においての最初のステップと言えます。どんな営業活動においても、まずは良好な人間関係を築き、好感を持ってもらえなければ話が始まりません。もしグリッピングができないままに話を進めていくと、一方的な説明で終わってしまうだけでなく、不快感さえ与えてしまいかねません。

 

その上で、グリッピングにおいては、以下に挙げる五つの要素を踏まえて関係性を構築することが重要です。

 

社会的望ましさ

社会的望ましさとは、一般的に好感を得やすい特性のことです。社会的望ましさの最も顕著な例は、容姿などの身体的魅力にあり、住宅営業においては、スタッフの身なりや立ち振る舞いにあたります。

 

特に住宅営業では、ターゲットとなるお客様の中心層である30代女性から好感を持っていただけるかどうかが最も重要です。下の図をご覧ください。人に好かれる性格ベスト5をまとめた研究データです。

 

 

ユーモアや親切なども重要であるものの、最も重要なのは誠実さであるという結果が出ています。この誠実さの要素については、ベテラン営業マンよりも、むしろ新人の若手営業マンの方が強い傾向にあります。ですから、特に若手営業マンは、この誠実さを武器にグリッピングを行うということを意識しましょう。

 

また、下の図をご覧ください。この図は、整備された飲食店と整備されていない飲食店の比較です。

 

 

社会的な望ましさは、営業個人に限った話ではなく、会社のスタンスも含まれています。ですから、展示場やモデルハウスに埃があったり、スリッパが揃ってなかったりということも、社会的な望ましさが欠けていることになります。モデル展示場やモデルハウスのしつらえなども意識して、清掃を行いましょう。

 

下の図は、最新の色彩心理学から見る、営業でおすすめのネクタイカラーです。

 

 

黄色は「話しましょう」、青色は「安心してお任せください」、白色は「誠実です」、桃色は「面倒を見ます」など、色によってさまざまな印象を与えることができます。これらを踏まえて、ネクタイの色を変えましょうというわけではなく、ネクタイ一つとっても、お客様にどう見られているのかを意識するくらいのレベル感が必要であるということです。

 

自己開示

自己開示とは、その名の通り、営業マンが、自分はどのような人なのかをお客様に知ってもらうことです。人間関係が親密になっていく過程において、個人的な情報交換が非常に重要な役割を果たします。とはいえ、突然自分の話を始めても、お客様は違和感を感じるだけですので、営業マン自身の情報をまとめた自己紹介カードを活用すると効果的です。次の図は、自己紹介カードの要素をまとめたものです。

 

 

自身の写真や年齢・出身地・部活動や特技などを記載して、自身の情報を開示しましょう。その際のポイントとしては大きく分けて三つあります。

 

 

まず一つ目に、趣味・子供・ペットなどの共通点を見つけやすいネタを入れましょう。二つ目に、〇〇と誕生日が一緒など、興味を持ちやすいネタを入れましょう。三つ目に、過去の建築実績などのポジション獲得につながるネタを入れましょう。

 

返報性

多くの人は、何かをしてもらったら、そのお返しをしなければいけないという心理が働きます。これを「好意の返報性」と言います。好意の返報性について研究した心理学者は、顧客に何らかの行為を提供することで、顧客との関係性が生まれるという結果を発表しています。これを住宅営業で応用することで、非常に効果的なグリッピングにつながります。具体的には、ドアを開けてあげる・スリッパを用意する・お子様へのプレゼントを準備するといったことが挙げられます。

 

態度の類似性

態度の類似性とは、意見や態度、過去の経験が一致するとお互いに好感を持つというものです。先ほどの自己紹介カードや世間話の中から、お客様との共通点を見つけることで、その効果が発揮されますし、話す速度や言葉遣い、話をするときの姿勢などを相手に合わせることも、態度の類似性を生かしたグリッピングの手法と言えるでしょう。地元ネタ・共通の趣味・お客様と同じドリンクを頼むといったこともその一つです。また、お客様の来場アンケートから類似性を探すのが非常に効果的です。

 

単純接触

心理学者ザイアンスの実験によると、印象が中立の場合、接触回数や接触頻度が増すほど好感度が上がるという結果が出ています。第一印象が悪くないことが前提ですが、お客様と何度も接触することで、好感度を高めることができます。第一印象が良ければ、当日の御礼・訪問・お礼状などが効果的でしょう。

 

本日のまとめ

 

改めて、本日のまとめをお示しいたします。

checkbox営業は、グリッピングからイメージングまで、顧客の心理ハードルにあわせた対応が重要である。

営業の際には、スタッフの身なり・会場の清潔感・丁寧な接客などを意識することが重要である。

checkbox顧客に対しては、自己開示や共通の話題を用いた会話や、接触頻度を増やすことが効果的である。

 

以上、今回は、お客様と関係性を構築するためのグリッピングについて見てきました。

 

この取り組みは、営業の初回接客、さらに名刺交換のタイミングで重要になる手法ですので、しっかりと意識することが重要です。特に若手営業マンはグリッピング力が武器になりますので、体得して活用していきましょう。

 

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